咳には咳止め?

外来には風邪の患者さんが多数いらっしゃいます。風邪には鼻水やのどの痛み、発熱などいろいろな症状があるのですが、中でも咳で苦しんでいる患者さんは少なくありません。

ここでは咳についてまとめておきます。

どんな治療もそうですが、症状を抑え込もうとする治療と、症状の原因を除去する治療があります。咳止めは咳という症状を抑え込もうとする治療、咳には咳の原因があり、その原因に対応することが大切です。

咳には湿性咳嗽と乾性咳嗽があります。からんだ痰を取ろうとする咳とのどの刺激などから出る咳で痰が絡まない咳です。基本的に咳止めを使用するのは、乾性咳嗽であり、湿性咳嗽は痰をしっかり出すための生理的作用なので、痰を出しやすくするための去痰剤などを使用しながら、むしろ咳をしっかりしていただきたいのです。

また咳止めだけでは効かない咳がたくさんあることも知っておく必要があり、そうした場合、咳の原因を考え、その原因を除去することが大事になります。

咳止め以外の薬での治療が必要な咳にはどんな咳があるのでしょうか?

慢性の咳を例に薬の使い方を簡単にまとめます。

 

・主に抗生剤による治療を中心とする咳

1・百日咳

百日咳菌による呼吸器感染症。特有の痙攣性咳発作を特徴として、回復には3カ月程度の時間が要するといわれています。発熱などの特徴的所見に乏しく、時には尿道炎などを合併することがあるといわれています。

2・非定型肺炎

比較的体力のある60歳未満の方に見られる、マイコプラズマやクラミジア、レジオネラ菌などによる肺炎で、頑固な咳が特徴で痰や発熱は少ないといわれています。

3・副鼻腔気管支症候群

慢性気管支炎などに慢性副鼻腔炎などが合併した病態。咳嗽や喀痰、呼吸困難や膿性鼻汁などを伴う病態。去痰剤などとともに、抗生剤治療を要することが多いようです。

 

・主に吸入ステロイドや抗アレルギー薬による治療を中心とする咳

1・アトピー性咳嗽

アトピー素因のある方に多く見られる咳であり、ヒスタミンH1受容体拮抗薬などが有効。しかし吸入ステロイドを併用することも多い。

2・咳喘息

正式な喘息ではありませんが、喘息の亜型と考えられており、経過中に30%程度の方で喘鳴が出現し、喘息に移行しやすいといわれています。第一に吸入ステロイドの使用が勧められ、そのほかにロイコトリエン受容体拮抗薬などが有効といわれる。

3・喉頭アレルギーによる咳

喉頭異常感と執拗な咳を特徴として、抗ヒスタミン薬の内服や、時には麻黄附子細辛湯やステロイドの全身投与、重症の場合には気道確保などが必要な場合もあります。

 

・そのほかの薬が効く咳

1・胃薬が効く咳

胃食道逆流と呼ばれ、胃酸が逆流して咽頭を荒らすことで出る咳の場合、胃酸を低下させることで、咽頭の損傷を防ぎ、咳を出させないようにすることが大切です。

2・抗真菌薬が効く咳

慢性咳嗽の患者さんの喀痰から、高率に真菌が検出され、抗真菌剤が有効なことがあったといわれています。

3・トシル酸スプラタスト(IPD)が効く咳

肺がん術後に乾性咳嗽が持続するものにIPDを投与した場合、主観的改善が見られたとの報告があります。

 

以上咳止め以外の咳の治療について簡単にまとめてみました。