認知症サポート医フォローアップ研修会

今日私は、認知症サポート医のフォローアップ研修に出席した。2年間で、計8回の研修の今日は第1回目だった。

講師は東京都健康医療センターの実際の臨床や研究に携わっている先生方だ。集まっている聴衆も地域の認知症医療の第一線を担っている中心的役割を担っている医師ばかりである。

おのずと講義内容は高度となる。質疑も質が高い議論が続いた。

今日は、認知症の疾患概念の変遷、そして病理について詳しく語られた。

よく行われる疾患説明は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症、レビー小体型認知症などの代表的疾患の特徴的症候の説明、そして抗認知症薬の使われ方やそれぞれに合併しやすい症状、例えば抑うつや興奮、不眠などの症候に対する対応の仕方が語られることがしばしばだが、今回の研修会は全く異なった。

 

病因論から始まり、解剖的特徴、そしてそれに基づいた画像的特徴、そして最終的に表れる症状。これらがもともとの病前性格や気質に加わり、脳や全身のどの部分にどのような変化が現れるかという専門的かつ最新の知見をもとに今後治療全般を見直して考えていくという質の高い研修会だったのだ。

 

例えばアミロイドβやタウ蛋白などは中枢神経に特に脳に特異的に沈着し、老人斑や神経原繊維変化をきたすのがアルツハイマー型認知症であると一元的に説明されることも多いが、実際にはどちらかの変化しかないものもあるし、アミロイドβなどがたまり始めて、実際にアルツハイマー型認知症が発症するには数十年がかかるというのだ。つまり今の抗認知症薬はある意味行き着いた神経変異による異常を和らげているといえる。

これまでも抗認知症役がはたしてきた役割は小さくない。飛躍的に自立生活できる認知症患者さんが増えたのは介護のおかげだけではないのだ。今後も病態の解明が望まれる。そして更なる治療の進展も・・

 

このように病理などから見ると認知症の患者さんの中に起こっている壮大なドラマが見えてくる。今後これらの複合的なドラマを少しずつ解明できる日も、そんなに遠くないのではないかと思える。そんなことを夢見れる研修会だった。