私たちが目指すかかりつけ医療

今晩、私はある雑誌の取材を受けることになっている。

今、在宅医療の重要性がたかまり、在宅医療専門医療機関が認められる時代を迎えたというのに、なぜ私たちが在宅医療専門をやめて外来診療をするようになったのか、不思議だというのが取材の意図らしい。

確かに、はたから見ると私たちの行動は不可解なのかもしれない。もうすでに20年以上在宅医療に専従し、多くの在宅医療者を輩出してきた当院が、在宅専門を捨てて、なぜあえて外来を始めたのか知りたいというのだ。しかも当院は、高度重症在宅患者を専従的に受け入れる在宅専門医療機関だったからだ。

しかし私は在宅医療もかかりつけ医療の一部だと思っている。つまり、外来や検診など多岐にわたるかかりつけ医業務、さらに小児から成人、高齢者や超高齢者などを支える医療の中で、在宅医療は重要ではあるが一つの形態に過ぎないと思っている。

これまでは在宅医療を行う医療機関が少なく、在宅看取りなどに対応できる医療機関が少なかったから、私たちは在宅医療に専従する必要があった。しかし昨今は在宅医療を行う医療機関も増えてきた。在宅での看取りも増えてきている。昔はがんの患者さんなど重症度の高い患者さんのご紹介が多くの地域からあったが、少しずつ遠方からの依頼は少なくなって行った。もちろんこれからも私たちは求められる高度在宅医療を提供し続け、またリードし続けたい。しかしそれは求められるかかりつけ医療全般を行いながら、高度かかりつけ医療を目指す中での話である。

しかし私たちがこれまで在宅医療で学んだことは大きい。また高度在宅医療を行いつつ整備してきたクリニックの陣容はかかりつけ医療を行うのにとても大切であるとも感じている。今後は私たちなりのかかりつけ医療の在り方を目指す必要がある。

私たちが目指すかかりつけ医療とは何だろうか?

地域住民の生活を支えるという役割こそがかかりつけ医療の根幹だと私たちは思っている。「生活を支える。」一言でいえばたやすいが、実に大変なことである。元気な方ならあまり難しくはないのだが、虚弱な方のかかりつけ医療は一人ではできない。多職種協働が望まれる。

生活において必要な医療的対応は24時間365日必要だろう。生活において必要な医療は内科、緩和ケア科、整形外科、皮膚科、小児科、精神科など多岐にわたるだろう。地域での様々な疾患の治療能力を伸ばすと同時に、リハビリや看護、栄養指導なども必要だろう。これらをすべて地域の専門医療機関同士で連携をとることで対応するということもいいだろう。一方で、一医療機関でそれを行う大規模かかりつけ医療機関もあっていいはずだと考える。

大規模医療機関だといってもすべてのかかりつけ医療ができるわけではない。病院との連携、他の地域医療機関との連携は何より大事だ。さらに介護サービスや生活支援の方々との連動は不可欠だ。今後も私たちは私たちでできることを伸ばしつつ、周囲と協働しながら、非常に虚弱化した方でも生活が全うできる地域になるための努力を行っていく。

それこそが私たちの使命だと思っている。