第四の時代

本日私は、クリニックの先生方と一緒に、東京都医師会で開かれたかかりつけ医機能研修制度の研修会に出席した。

この研修会は、テレビ講演会という形をとっており、日本医師会館で開かれた実際の研修会をテレビ放送し、全国各地の医師会で放送するものだった。私は東京都医師会の会場で受講したが、全国では合わせて6000名以上の医師が受講するという大がかりなものだった。

いかに今の医師会がかかりつけ医機能の充実に力を入れているのかということをまざまざと実感されるものだった。

 

研修会の内容は、・かかりつけ医の倫理、・生活習慣病、・フレイル予防・高齢者総合機能評価・老年症候群、・かかりつけ医の摂食嚥下障害、・かかりつけ医の在宅医療、緩和医療・奨励検討と多岐にわたったが、どれもこれからのかかりつけ医には欠かせない内容だった。

 

その中で印象的だったのは、在宅医療もかかりつけ医療の延長線で行われるべきだというお話だった。そんな話を伺いながら、私は昔を思い出していた。

 

20年前私が開業し、在宅医療を始めたころ。在宅医療専門の医療機関は少なく、まだまだかかりつけ医療の延長線、往診的な在宅医療が残っていた。その頃は多くの開業医がまだ細々であったが、往診や在宅医療をしていた時代である。それと同時に当時、日野原重明先生や佐藤智先生など在宅医療の先達たちも活躍していた。いわゆる在宅医療の黎明期であり、どちらかというと人道支援型在宅医療だった。

そして私たち、在宅専門の開業が少しずつ増えてきて、システミックに在宅医療を行う医療機関が発生してきた。当院もその頃に在宅医療を推進してきた歴史がある。当時の在宅医療は退院支援型、重症特化型の在宅医療が進展した。

その後2000年の介護保険制度の施行に合わせるように、在宅医療のさらなる普及が進むと同時に、介護支援型、介護施設支援型の在宅医療が大きく普及した。

そして今、地域包括ケアの時代を迎え、再びかかりつけ医による在宅医療が重要性を増しているのである。

このようにたった20年であるが、在宅医療も、人道支援型→重症特化型→介護支援型を通り、いまさらに第四の時代であるかかりつけ医型になりつつあることを実感する研修会だった。

 

しかし生活習慣病でも認知症対応でもいえることだが、確かにかかりつけ医の役割は大きい。しかしかかりつけ医療機関だけで、専門医療機関がなくていいというわけでもない。認知症専門、糖尿病専門があっていいように、在宅医療専門があっていい。

 

そんな思いにも駆られる研修会でもあった。

より多くの選択肢、より適切な選択肢が得られる、そんな時代になってほしいものだ。

ひそかな問い

10年後私たちは、どのような医療者になっていたいか?

10年後私たちは、どのような医療機関でいたいのか?

そう問い続けている。

 

時代も変わるだろう。人や町も変わるだろう。そして医療も変わるだろう。

もし無事に10年後を迎えられたら、

私は65歳になっている。

送迎か?訪問か?

外来を初めて見ると、一人では通院できない患者さんが少なくないことに気が付く。

ヘルパーさんに付き添われてみたり、家族に好き添われてみたりして、通院してくださっている。

そのような方に家族やヘルパーさんも大変だから訪問診療しましょうか?それとも当院からの送迎サービスを利用されますか?と聞くと、たいていは送迎サービスを選ばれる。

外来は待たされることも必至だ。いろいろな意味で大変ではないだろうか?と思うが、それでもその傾向は変わらない。

面白いものである。

高齢化社会において、必須な医療とは自立を維持、高める医療だという話がある。

それぞれの自立性に応じた受療形態が用意される。それこそがかかりつけ医療なのかもしれない。

高齢疾患としてのがん

本日私は向山先生と、日本橋で開かれた第4回がんサポーティブケア研究会に出席した。がんサポーティブケアとは聞きなれない言葉だが、私たちも今まさにがんの在宅医療からがん全体のサポーティブケアの在り方について思いを巡らしているので、大変関心がある研究会だった。癌研や聖路加、がんセンターなどがん医療に携わる様々な医療者が集まり、がん治療中の症状コントロールを含めて、がん患者が直面する問題を討議する会だった。

そしてそこで昨今創設されたばかりの「日本がんサポーティブケア学会」の田村和夫会長の講演を聞く機会を得た。

講演の中で、田村会長が話す。「がん患者の80%は60歳以上であり、がんで亡くなる患者さんの80%以上が65歳以上である。」と。

今の60歳や65歳はとても元気だ。だから高齢者だからといっても必ずしも虚弱ではない。しかし確かにがんを患っているが、全身状態の低下はパーキンソン病によるという患者さんもいる。入院してがん治療を受けるのはいいが、その間に認知症などの障害が進んでしまう患者さんも少なくない。

今後がんの患者さんの支援は単に治療ではとどまらない。生活支援、介護、環境整備など様々な支援が必要である。

がんサポーティブケアという新しい概念を私たちは今模索し始めている。