よりよく生きるための知見

今日私は、お茶の水の日本大学病院で開かれた「下部尿路機能障害講習会」に出席した。本講習会は、日本老年泌尿器科学会、日本泌尿器科学会、日本排尿機能学会が共催で、病院入院中の持続導尿の患者さんの排尿自立を図るためのチーム(医師、看護師、理学療法士)の養成のための講習会でもある。したがって、参加者はほとんど病院勤務の医師だったので、やや場違いな感じもあったが、私も外来、在宅の現場で、普段から高齢者の頻尿や尿閉、失禁などの診療に従事している立場であり、しかも最近では、自分自身も前立腺肥大や失禁、夜間頻尿などを自覚することも多くなったという個人的事情もあり、まとまった講義を伺うまたとない機会だったので、急きょ日本老年泌尿器科学会に入会し、本講習会に参加させてもらった。

 

一言で排尿の問題といっても、非常に複雑な病態生理がかかわっており、たとえ泌尿器科医といえども、評価、治療、そしてケアなどにはなかなか難渋することが多いという。

加齢によるものや、薬物によるもの、疾患によるものなど、さまざまな理由が加わり複合化しているし、排尿、畜尿には、さまざまな中枢、神経、筋肉などが関与しているために、障害部位の特定も困難である。しかし少しずつ、さまざまな検査、薬物療法、ケアの仕方などの知見も広がってきている

 

また在宅では、尿道カテーテルが留置されたままになっている高齢者が少なくない。その多くは入院時に尿閉もしくは排尿障害が見つかり留置されたものだが、抜去のタイミングを失い、そのまま帰宅している人たちだ。今回の研修会では、主に入院の患者さんのバルーン抜去の仕方が中心だったが、在宅でのバルーン抜去についても、明確な指針をいただけた。

現在の尿道留置カテーテル使用中の人でも、排尿自立ができるようになる人や、間欠導尿、夜間持続導尿などを併用することで、完全留置から離脱できる人が少なくないというのだ。

 

また外来で数多く相談を受ける失禁や頻尿についての問題に対するアプローチも明確になった。年を重ねていくと、必ず遭遇する問題に、下部尿路機能障害がある。

その障害とうまく付き合うためには、どうしたらいいのか、という知見にあふれる講習会であった。

 

下部尿路機能障害とは、在宅、外来患者さん・・そして自分、それぞれがよりよく生きるために大切な知見が詰まっているようである。

 

排尿の問題を持っている方は、私にこっそりとご相談いただきたい。

私にできることは少しかもしれないが、改善できる方法が必ずあるという実感を持てた講習会である。