訪問診療のユートピア

私は今秋火曜日から夏休みをいただいている。

そしてその間、さまざまな先駆的クリニックの見学をさせていただいている。私にとってそれぞれが素晴らしいクリニックであり、それぞれがまさにユートピアを作り上げていると普段から尊敬するクリニックだ。ブログで少しずつ紹介したい。 

最初が「悠翔会 北千住クリニック」。

http://yushoukai.jp/

医療法人 悠翔会は、若い新進気鋭の理事長である佐々木淳先生を中心に、都下に在宅専門クリニックを10以上展開する、今や在宅医療の世界を語るには避けて通れない大御所的存在であり、訪問診療を通じての地域の活性化を模索している医療機関である。

私は以前からそのシステムの優秀性や先見性に関心があったので、今回、佐々木理事長に無理をいって見学をさせていただいた。中でも悠翔会 北千住クリニックは、当院で以前勤務さっていた先生が院長を務められていることもあって、ご縁もあるクリニックだった。

 

9時の訪問診療の出発に間に合うようにお伺いすると、ちょうどミーティングが始まるところだった。前日の夜の当直の動きと同時に、その日の予定や新患さんの動向などをスタッフ全員が共有化するためだ。そのあとは、高橋先生と看護師さんとドライバーさんの3人の乗る車に私も同乗させていただき、数件の訪問を回らしていただいた。訪問診療に特化し細部まで工夫が隅々までされている使いやすい電子カルテと、単に診療介助だけではなくケアチームの連絡なども怠らず、在宅医療全体をコーディネートする看護師さんと、年配だが確かな運転技術で診療をサポートするドライバーに囲まれて、親身な在宅診療をされている高橋院長の姿に訪問診療のユートピアを見る思いだった。親身で活き活きした訪問診療は、もちろん高橋先生の確かな診療技術に裏付けられた診療自体のすばらしさの表れではあるが、実はそんな強固なバックアップがあることでも、実現されるのだと感じ入った。

 

悠翔会では、夜や休日の体制はすべて、専門の当直医によってカバーされているが、細かいルールを設定したり、サマリーを充実させることで、日勤者への連絡などがなくても、一貫した対応ができるように工夫されているなど、常勤医が20名以上を要するマンモス訪問医療機関は、まさに在宅主治医にとってのユートピア。そしてそれはつまるところ在宅患者さんにとってのユートピアにもつながるはずと夢見た次第です。