総合診療のユートピア

IMG_0077 (002)そして本日お伺いしたのが「ハーモニークリニック」だ。

http://meiiken.or.jp/

院長の中根晴幸先生は、私の研修医時代の指導医である。私に在宅医療の必要性を教えてくれた師匠でもある。つい最近当院でも外来をはじめかかりつけ医療機関としてのスタートをしたばかりだが、その中根先生が22年かけて、埼玉県浦和市に作り上げたクリニックはまさに中根先生の地域医療の魂が込められた地域医療機関であるはず、その学びを私たちは今こそ必要なのだと感じたのだ。

開設当初からのコンセプトが素晴らしい。

外来診療と同時に、当時ではまだ珍しかった訪問看護、薬局との連動による在宅医療を開始されており、しかも自宅での中心静脈栄養カテーテル設置など非常に先駆的在宅医療をされていた。

それが20年以上の歳月をかけて、クリニック2つ、訪問看護ステーション3か所に増えて、スタッフ数100名を超える大所帯に発展していることは、あながち裏付けがないわけではない。そこには、開設当初からの理念を引きつぐ古くからいるスタッフは、もちろん今でも中心的な役割を担っているし、さらに新規に経営管理の専門家の協力などで、実績だけではなく、新規性、先駆性にも優れている医療機関と成長されているのだ。

当たり前のことだが、そういう実績と先駆性の高度の融合は、若い医師たちの共感を呼ぶ。地域医療に興味がある若手の医師も少なくないはずだが、実際には地域に出てみると、現場の限界性を感じ、自らの将来を投影しづらく感じている医師が多いといわれる。しかしハーモニークリニックに集う8名の常勤医は皆若く、大変問題意識も優れた優秀な医師ばかりだ。

積極的に皆が発言するカンファレンスに私も参加させていただいた。

様々な積極的な質問が飛び交う中、私に今後の研修医の教育の仕方はどうしたらいいのか?など私も答えに窮するような質問を投げかけてくれた。

外来にはCTや内視鏡検査など、クリニックにして最大級の検査機器を擁しており、最大6診での診療体制、さらには様々な非常勤専門医、連動できる訪問看護ステーションや薬局、ヘルパーステーションなどの存在も心強い。

こんな恵まれた環境で、在宅診療はもとより外来診療、ひいては病院の業務など多彩な仕事ができるとは、なんとうらやましいことだと、私も自分が若い時を振り返って思わざるを得なかった。

まさに20年以上前に中根先生が夢見た、若手の総合診療医たちのユートピアがここにあると感じいった次第である。そして若手の医師たちのユートピアはすなわち将来の地域医療のユートピアでもあると、今回の見学を通じて学ばせていただいた。

 

地域活性・地域実習のユートピア

IMG_0053 (002)水曜日には、岐阜の「総合在宅医療クリニック」を見学させていただいた。

http://www.sogo-zaitaku.jp/

すでに開設されてから9年を経過しており、地域ではなくてはならない在宅医療機関であり、常勤医3名を擁して、地域の重症在宅患者さんの積極的受け入れをしていた。在庫管理にトヨタのかんばん方式を利用していたり、スケジュール管理ソフトや独自開発されている電子カルテなど、さまざまな診療バックアップシステムにも目を見張った。

しかし何より創造的なのは、教育・研修体系の在り方だ、すでに国内はもとより海外からの研修生も数多く受け入れ、現場の実習などを強化されている。

主体的な学びの場として在宅医療をとらえているところが、素晴らしい。

今年10月には新社屋を建設され、常時研修者や学生たちが学び集える場所を提供したいと市橋院長は目を輝かせながら、抱負を語る。地域の人が集い、その人たちが次世代の地域医療者を育成し、在宅医療を通じて地域づくりにまで考える医療者がいる訪問診療のユートピアだ。

そんな岐阜の今後の進展が心から楽しみになった見学であった。

 

また市橋先生はクリニック内部に、倫理委員会を設置して在宅医療の研究を取り組んだり、バイオリニストによる音楽療法を定期的に実施し、プロデューサーによる地域の様々な団体との関係づくりなども取り組まれているなど、その幅広い活動をされていることに驚かされた。

まぎれもなく、今後の在宅医療の旗手の一人であると感じ入った次第である。

 

訪問診療のユートピア

私は今秋火曜日から夏休みをいただいている。

そしてその間、さまざまな先駆的クリニックの見学をさせていただいている。私にとってそれぞれが素晴らしいクリニックであり、それぞれがまさにユートピアを作り上げていると普段から尊敬するクリニックだ。ブログで少しずつ紹介したい。 

最初が「悠翔会 北千住クリニック」。

http://yushoukai.jp/

医療法人 悠翔会は、若い新進気鋭の理事長である佐々木淳先生を中心に、都下に在宅専門クリニックを10以上展開する、今や在宅医療の世界を語るには避けて通れない大御所的存在であり、訪問診療を通じての地域の活性化を模索している医療機関である。

私は以前からそのシステムの優秀性や先見性に関心があったので、今回、佐々木理事長に無理をいって見学をさせていただいた。中でも悠翔会 北千住クリニックは、当院で以前勤務さっていた先生が院長を務められていることもあって、ご縁もあるクリニックだった。

 

9時の訪問診療の出発に間に合うようにお伺いすると、ちょうどミーティングが始まるところだった。前日の夜の当直の動きと同時に、その日の予定や新患さんの動向などをスタッフ全員が共有化するためだ。そのあとは、高橋先生と看護師さんとドライバーさんの3人の乗る車に私も同乗させていただき、数件の訪問を回らしていただいた。訪問診療に特化し細部まで工夫が隅々までされている使いやすい電子カルテと、単に診療介助だけではなくケアチームの連絡なども怠らず、在宅医療全体をコーディネートする看護師さんと、年配だが確かな運転技術で診療をサポートするドライバーに囲まれて、親身な在宅診療をされている高橋院長の姿に訪問診療のユートピアを見る思いだった。親身で活き活きした訪問診療は、もちろん高橋先生の確かな診療技術に裏付けられた診療自体のすばらしさの表れではあるが、実はそんな強固なバックアップがあることでも、実現されるのだと感じ入った。

 

悠翔会では、夜や休日の体制はすべて、専門の当直医によってカバーされているが、細かいルールを設定したり、サマリーを充実させることで、日勤者への連絡などがなくても、一貫した対応ができるように工夫されているなど、常勤医が20名以上を要するマンモス訪問医療機関は、まさに在宅主治医にとってのユートピア。そしてそれはつまるところ在宅患者さんにとってのユートピアにもつながるはずと夢見た次第です。

 

 

パーフェクトワールド

今日往診依頼が立て込んでいる中で、少しの時間だが、私は障害者の学校に見学に行った。

ハローワークから、障害者雇用のための学校見学会の案内をいただいたためだ。

 

私は普段いろいろなところに行く。

それこそ人が行く機会もないところ伺う機会が多いが、学校に入ることは珍しい。

 

校庭や校舎、そして学生の笑い声・・すべてが懐かしいと同時に新鮮。

 

私のような事情もよく知らない。ちょっとした興味で伺った見学者に対して、障害者である生徒さんが一生懸命お茶を出してくれる。

校長先生が、ぜひ雇用を検討してほしいと切々と訴える。

 

私は、恥ずかしながら、ずっと泣いていた。

なぜなのかわからいが、涙しか出てこなかったのだ。

 

それが、あまりにもそれが美しい世界だったから・・・・。

今思い出しても、泣いてしまう自分がいる。