かつて私も病院に勤務していたが、それは20年以上も前のことである。初期研修医を終えてすぐに地域に飛び出してしまった私が、病院医療に触れることができたのは、時々の外来研修やカンファレンスの場でしかない。今回患者として、外来そして入院医療を体験し、改めて病院医療の変貌ぶりに驚いた。
その一つが徹底した精度管理(安全対策)だ。
何か処置や検査を行うにあたり、名前、生年月日の呼称による本人確認は常だし、看護師さんが持っている携帯端末では、患者や点滴についているバーコードを確認しつつ、事前指示を確認できたり、点滴ミスなどが起こりえないようになっている。オペ室に入った時でも、名前、千年月日とともに自分が受けようとする手術名や麻酔方法を確認されたし、麻酔科医を始め多くのスタッフ麻酔準備をしている間、すべての行為をお互いに読み上げしつつ、齟齬やミスが生じないようにしていた。
このような安全対策、精度管理は多くの患者さんを適切に医療対応し続けるにはとても大切なことだと思った。
しかしすべての医療現場でこれほどの安全管理ができているわけではない。ましてや在宅医療の現場では、まったくといっていいほどだ。おそらく在宅医療ガンバだけではなく、安全管理や制度管理より、ヒューマンタッチやフレキシブルな対応が求められる医療現場もいまだに多いだろう。もちろんそのような現場でも安全な医療提供を心掛ける必要がある。その時に個人個人の医療者毎の制度管理が問われるのだろう。
病院や組織による安全管理・制度管理、個々の医療人の努力による安全管理・制度管理。それぞれの現場ごとの最適解があるのかもしれない。
また医療安全を重視しすぎると患者の自律性を軽視しがちになるし、患者の自律性に任せたとき、医療安全が本当に確保できるのか?という問いもある。
この辺りのバランスは非常に難しい。