「おつり」で生きる。

ある日、ご夫婦で診察させていただいているお宅で。

先生「奥様も落ち着いてお過ごしですし、ご主人もお元気ですね。」

御主人「先生、私より先に認知症になった妻の介護をはじめてもう随分になります。私が元気じゃないと、妻が生きていけない。正直、私も疲れてますけどね。(笑)気が付いたら日本の男性の平均寿命をとっくに超えてました。今はもう、神様からの「命のおつり」で生きてるわけで・・まあ、そのうちおつりもきれるでしょうけどね、ハッハッハッ・・」

間もなく90代になられるニコニコしたご主人の達観したお話に、私もドクターもしばし、沈黙しました。なるほど、寿命を超えた「命のおつり」か・・。

早速、介護疲れの見える御主人の件を離れて暮らすご家族に連絡し、今後の方針を検討する手はずを取ったのでした。[S]