今日、腹部大動脈瘤による下肢血流障害から歩行困難になった患者さんが、へとへとになって来院された。
もともとは午前診療の11時半の来院予約だったが、来院されたのは午後3時の午後の診療時間の開始時間だった。
律儀な彼は、11時半の外来予約に間に合うために、11時には家を出たという。
しかし途中で歩けなくなり、結局11時半には間に合わなかった。
それでも休み休み、這うようにしてやってきた。
結局は、家からたった50メートルの距離を4時間かけてやって来たということになる。
いくら暖冬とはいえ、2月のことだ。病弱な高齢者が4時間外にいれば、へとへとだ。
診察室に入るなり、コートを手荒く脱ぎ捨てる。
これから近くの病院で手術の予定だが、その間何度も病院に通う必要がある。
そして手術は3月中旬だという。その間、買い物もままならない。
「食事はできるのですか?」という私の質問に、「買い物に行けないので、食べていません。」と彼は答える。
「急いで介護保険の申請をします。」
「送迎もしますし、往診もします。」
「介護保険の訪問看護が始まるまで、医療保険の訪問看護で当院が対応します。」
私は矢継ぎ早に話し、スタッフに対応をお願いした。
帰りは、当院のスタッフが車いすで送迎してくれた。
その後、私は栄養剤を処方した。少なくとも買い物に行かなくとも、彼が生活できるように。そしてその後スタッフから方向をうけた。
「介護保険の申請を行い。そしてケアマネがかかわった。」
スタッフの相応能力がありがたかった。
たった当院から50メートルの距離にこんな人がいるのだ。
たった50メートルだから彼は何とかこれた。もちろん予約時間には間に合わなかった。
でもそれ以上では、医療機関に行けない人がどれぐらいいるのだろう。