医療の3要素

医療の役割には、治療、マネージメント、そしてサポートがあるように思う。

治療は言わずとしれた医療の中核で、病気を治すこと。

たとえば感染症を治す、がんを治すなど病気を治すことだ。病気を治すことで患者さんの人生や生活を改善する。医療の中核的役割である。

一方、マネージメントとは、糖尿病など生活習慣病を代表とするように、その病気自体の治癒を目的とするのではなく、薬物療法、生活指導などを組み合わせながら、その病気をきちんとコントロールすることで、合併症によって患者さんが傷つかないように管理、予防を行っていくというものだ。多くの慢性疾患の患者さんたちがこのマネージメントのために継続的に医療機関に通院されている。

そしてサポートとは、様々な病気や障害が複合化している人がうまく生活できるように支援することだ。リハビリや介護、生活の支援を行いつつ、時には医療者の寄り添いや励ましや症状の緩和などを図っていきながら生活の質を高めるというものだ。

この医療の役割の3要素はどれ一つが欠けても成り立たない。

もともと医療は治療から出発した。その後慢性疾患の増加によりマネージメントという手法を取り入れ、さらに今や高齢化社会の到来に合わせてサポートの重要性が叫ばれつつある。

この医療の3役割は、疾病の在り方や患者さんのありかたによってウエイトが異なる。たとえば病初期、自立度が高い時には治療的、マネージメント的医療が望まれるだろうし、病状が進み、虚弱度が進み、生活機能が低下するとサポーティブな医療の重要性が増してくる。高齢化社会、長寿社会をむかえこれらのバランスが変わりつつあり、治療からサポートへの流れが強まっているように思う。

認知症やロコモティブシンドローム、ザルコペニアなど昨今提唱され始めた疾患概念は、それぞれ高齢期にみられる知的、運動的、栄養的虚弱性を表す。さらにそれらを複合的にとらえるフレイルという概念があるが、これらはすべて治療やマネージメントに先立ちサポートを行うことが求められる。

在宅医療をしていると見えてくるものがある。高齢化社会の医療は、このサポートの重要性なのだ。一方で外来では治療とマネージメントが重要になる。医療者としてのバランスをとるうえでもこれらの双方のかかわりが重要になるのだ。