父親の療養

最近私の周りでは、両親の介護の問題を抱えている人が増えている。自分が50代後半になり、親が80~90代になりつつあり、まさに介護は他人ごとではなくなってきているのだ。普段かかりつけ医として介護の相談に応じたり、実際の在宅療養の医療的支援をしているが、家族の立場になってみると勝手が違うことが多い。

 

かくいう私の父親も要介護3、実家での一人暮らしをしている。

1日3回の介護サービス、訪問診療を利用しているが、これまでは手すりを使った伝い歩き可能で、比較的安定した療養生活を営んでこられた。

しかし低温が持続する東京で、暖房嫌いの父親は、寒い部屋の中で体が硬直して転倒を繰り返したり、嚥下が不良になり、脱水や肺炎の危険性が高まってきている。ヘルパーさんが緊急コールで対応してくれ、主治医が頻回に見守ってくれたおかげで何とか、父親は体調を取り戻しつつある。

 

今週末私は、1か月ぶりに自宅に訪問して、父親の変化を見舞った。久しぶりに見た父親は椅子に座りっぱなしになっており、近くのポータブルトイレにもいけない様子だ。食欲は良好で、がつがつ食事をするが、そのあとで強烈にむせこんでいる。正月に会ったときに比べて急激に生活機能が悪化していた。

 

どうしたらいいだろう。家族皆で頭をひねりながら、移動距離を少なくするために配置換えをし、嚥下ができそうなゼリーを大量に購入したり、ケアマネさんに介護サービスの増回や要介護度変更のお願いをした。いつもかかりつけ医として、私は患者さんにしている対応だが、家族の立場でするのとは大きく異なる。

 

父親は家での療養を希望している。しかし父親は独居生活者でもある。徐々に低下する父親の状況に応じた介護や生活支援サービスを保険、自費で、効率的に、しかも即時的に組み合わせていく必要がある。その間のサービスの隙間や必要な物品購入などは家族がささえることも必要だ。

 

今後は介護保険のサービスを利用しながら、それで足りないところは、ある程度の自費サービス導入も必要かもしれない。独居と言えども、いや独居だからこそ皆が力を合わせれば、何とかなるのではないだろうか?

独居を支える家族のありかたは、どういうことなのか、今後私たちの模索は続くようだ。