三峯神社

 関東には古くから狼に対する信仰がありました。とくに江戸時代、農民には害獣除け、町人には盗難除け・火難除けとして広く信仰され、講なども盛んに組織され人気を博したものです。その中心にあったのが奥多摩の御嶽神社と秩父の三峯神社であります。

 今回はこの三峯神社の古くからある表参道を経てお参りしてみようと池袋から西武線に乗ってえっちらおっちらやって参りました。西武秩父駅または秩父鉄道三峰口駅からバスに乗ると大輪というバス停があります(秩父駅から1時間15分、三峰口駅から50分ほど)。かつてはここから三峯神社まで標高差600mほどを登る表参道がさかえていました。そんな昔の面影を辿りつつ登ってみます。

三峯神社表参道入口

三峯神社表参道入口

石畳の道をしばらく進むとやがて赤い橋が現われます。

あたりの緑に朱塗りの橋が映えます

あたりの緑に朱塗りの橋が映えます

登竜橋といい、東京近辺の人ならおなじみの荒川にかかっている橋です。このあたりまで上流に来ると川幅日本一を誇る荒川もそれほど大きな流れではありません。

講が組まれて参詣されていました

講が組まれて参詣されていました

東京の入谷講(「入谷の鬼子母神」で有名ですね)の碑とオオカミ像。ほかにも築地などの講碑などもあり、当時の人たちの信仰と遊山、その両面があらわれているようです。

気持ちが引き締まる美しい滝です

気持ちが引き締まる美しい滝です

「清浄の滝」。見ているだけで自分の中にある汚いものが浄化されていく気がしますが、ぼくから汚いものを取ると何も残らなくなりそうなので早々に退散します。でも、こうした景色に出会えるのも、大輪から表参道を歩いたからこそ。

表参道にかかる立派な門

表参道にかかる立派な門

ようやく三峯神社到着です。お参りして、なかなかおいしい手打ちそばなど食べて(秩父はお蕎麦の名産地なのです)、ここからさらに登って奥宮へ。表参道を通らずにバスで来れば簡単に来られるこの神社ですが、奥宮へは自分の足で歩いていかなければなりません。

そう簡単に奥宮へは行かせません

そう簡単に奥宮へは行かせてくれません

落ちると結構な怪我をしそうな朽ちた橋。たやすく辿りつけないところが奥宮の奥宮たるとこでしょう。一日使って登ったり降りたりのご参拝。三峯神社だけでなく、たとえば大山の阿夫利神社など、かつての人にとっての観光とはこういうものだったんだなと昔をしのべるハイキングでもありました。