様々な医療ニーズ

外来をしていると、病気の予防のために、様々な生活習慣を是正し続けなければならないという患者さんが少なくない。しかしすべてが理想通りにはならない。様々なバランスの中で人間は生きているからだ。

飲酒さえやめれば、喫煙さえやめれば、暴飲暴食さえやめれば、そして規則正しい生活をすれば、薬などいらないで、もっともっと健康的でいられる。

そんなことはわかっていても、なかなかそうはいかない。

 

飲酒をしながらも、ある程度健康でいたい。

喫煙や暴飲暴食をしていても、それなりにバランスよく過ごしたい。

飲酒をしながら、肝機能の定期チェックをしたいという人、アルコールを飲みながら、尿酸のコントロールをしたいという人、そういう人が診療所に通ってくるのだ。

 

理想と現実の違い。一気に理想的な生活はできないまでも、まず今の状態で少しバランスをとりながら、徐々に理想的生活を目指そうという人たちなのだ。

私たちはそういうバランスも大事だと思っている。

 

それぞれの人の事情に応じた、健康の在り方・・・ひいては人生の在り方を健康のプロとしてアドバイスし続けることもかかりつけ医療の大事な役割だからだ。

 

一方で、病院には、理想的生活を送りながら、きちんと定期通院して、さらに厳密に医学的管理もしていくというハイエンドの医療ユーザーが多いように思う。

こういうハイエンド医療ユーザーから見ると、診療所の医療はややいい加減、かつあいまいな感じがするかもしれない。

 

また、逆に在宅では時に医療不信にも近く、これまで医療の管理や介入を避けてきたという人も少なくない。

在宅診療で初めて訪問した際に、「この人は医者嫌いで、これまで・・・・・・」という言葉を何度耳にしたものか。

 

人それぞれの人生があるように、人それぞれの医療とのかかわり方がある。

医療の在り方を押し付けるのではなく、それぞれの事情をまず優先し、できる医療を探していく。それがこれからの医療のスタンスのかもしれない。