万博記念公園

今の若い人たちから見ると夢物語のような話でしょうが、かつてこの国は高度経済成長と呼ばれる好景気に包み込まれた時期がありました。もちろん当時は当時なりの不幸や悲劇があったかもしれませんが、今となっては懐かしくノスタルジックに感じられる時代でもあります。そんな好景気まっただ中の1970年、大阪で開かれた万国博覧会はまさに日本の明るい未来を予見させてくれるような雰囲気もあり、日本中が熱狂的にその開催を喜び、夢中になったものです。

行った当日たまたま万博記念公園で雪まつり開催中でした

行った当日たまたま万博記念公園で雪まつり開催中でした

アメリカ館の月の石、ソ連館の宇宙船、新しいフロンティアが宇宙に向かって開いている、そんな雰囲気がありました。そして万博のシンボルであった太陽の塔。それは単にいっときの万博のシンボルにとどまらず、当時の日本全体の雰囲気をも思い出させるタイムカプセルのような働きを今も続けているような気がします。

そんな万博の跡地、万博記念公園へ先日行って参りました、アシスタントの坂本です。

その猫背がなんだか「千と千尋の神隠し」に出てきたカオナシのよう

その猫背がなんだか「千と千尋の神隠し」に出てきたカオナシのよう

万博記念公園駅でモノレールを降りるとさっそく太陽の塔がお出迎え。当時小学生だったぼくは万博に行くことができず、今回が太陽の塔との初対面。ちょっと照れてお互い無口。

実際に見てみると、ああ、これは縄文土器だなと感激しました。出産土器とも呼ばれる人面把手付深鉢土器を連想させるのです。縄文土器に大いなる関心を寄せた岡本太郎らしい造形のように思われます。

かつての鉄鋼館が万博の記念館としてオープンしています。館内はあの懐かしい雰囲気でいっぱい

かつての鉄鋼館が万博の記念館としてオープンしています。館内はあの懐かしい雰囲気でいっぱい

公園には万博の記念館であるEXPO’70パビリオンのほか、国立民族学博物館も併設されていてどちらも大変興味深い施設でありました。

世界各地の信仰、芸能など興味深い展示がてんこ盛り

世界各地の信仰、芸能など興味深い展示がてんこ盛り

三峯神社

 関東には古くから狼に対する信仰がありました。とくに江戸時代、農民には害獣除け、町人には盗難除け・火難除けとして広く信仰され、講なども盛んに組織され人気を博したものです。その中心にあったのが奥多摩の御嶽神社と秩父の三峯神社であります。

 今回はこの三峯神社の古くからある表参道を経てお参りしてみようと池袋から西武線に乗ってえっちらおっちらやって参りました。西武秩父駅または秩父鉄道三峰口駅からバスに乗ると大輪というバス停があります(秩父駅から1時間15分、三峰口駅から50分ほど)。かつてはここから三峯神社まで標高差600mほどを登る表参道がさかえていました。そんな昔の面影を辿りつつ登ってみます。

三峯神社表参道入口

三峯神社表参道入口

石畳の道をしばらく進むとやがて赤い橋が現われます。

あたりの緑に朱塗りの橋が映えます

あたりの緑に朱塗りの橋が映えます

登竜橋といい、東京近辺の人ならおなじみの荒川にかかっている橋です。このあたりまで上流に来ると川幅日本一を誇る荒川もそれほど大きな流れではありません。

講が組まれて参詣されていました

講が組まれて参詣されていました

東京の入谷講(「入谷の鬼子母神」で有名ですね)の碑とオオカミ像。ほかにも築地などの講碑などもあり、当時の人たちの信仰と遊山、その両面があらわれているようです。

気持ちが引き締まる美しい滝です

気持ちが引き締まる美しい滝です

「清浄の滝」。見ているだけで自分の中にある汚いものが浄化されていく気がしますが、ぼくから汚いものを取ると何も残らなくなりそうなので早々に退散します。でも、こうした景色に出会えるのも、大輪から表参道を歩いたからこそ。

表参道にかかる立派な門

表参道にかかる立派な門

ようやく三峯神社到着です。お参りして、なかなかおいしい手打ちそばなど食べて(秩父はお蕎麦の名産地なのです)、ここからさらに登って奥宮へ。表参道を通らずにバスで来れば簡単に来られるこの神社ですが、奥宮へは自分の足で歩いていかなければなりません。

そう簡単に奥宮へは行かせません

そう簡単に奥宮へは行かせてくれません

落ちると結構な怪我をしそうな朽ちた橋。たやすく辿りつけないところが奥宮の奥宮たるとこでしょう。一日使って登ったり降りたりのご参拝。三峯神社だけでなく、たとえば大山の阿夫利神社など、かつての人にとっての観光とはこういうものだったんだなと昔をしのべるハイキングでもありました。

東京国立博物館 長谷川等伯「松林図屏風」

 1月もすでに7日、いわゆる松の内があけようとしています。みなさま、どのようなお正月をお迎えされましたでしょうか。

 坂本には初詣などのほか、毎年正月の恒例行事が2つほどあります。一つは東京国立博物館の国宝室で1月に展示されるみんな大好き長谷川等伯の「松林図屏風」を観に行くこと。もう一つはその際、博物館の1年間有効のパスポートを更新することです。

 このパスポート、莫大な所蔵文化財を随時展示替えしている常設展に入り放題な上、特別展には6回入場できて4100円。ちなみに今やっている兵馬俑展の入場料が1600円ですから、どれだけお得なことか。

かわいい狩野山雪「猿猴図」

かわいい狩野山雪「猿猴図」

今年のパスポートの図柄は申年にちなんで狩野山雪「猿猴図」。ものすごくかわいい。

巨大な門松がお出迎え

巨大な門松がお出迎え

 巨大な門松が否が応でも正月気分を盛り上げてくれる中、いよいよ博物館に入場します。正月の間、中も外も華やいだ生け花が飾られていますので、それを見に来るだけでも楽しいかもしれません。

松林図屏風に佇む人たち

松林図屏風に佇む人たち

 まるで霧の中、向こうから何かが立ち現われてくるかのような松林図屏風。それはこの世界になかったものがどこか異界から姿を現してくるような不思議な神々しさを感じさせます。仏像や神像があるわけでもなく、ただ松だけが描かれているこの絵がどこか高い宗教性を感じさせるのはそんなせいなのかもしれません。毎年1月多くの人がここを訪れこの絵に接し、新年を寿ぐのもわかる気がします。この絵の前に立ち尽くした人々は、各々向こうの世界から松が姿を現すその瞬間に立ち会うのです。霧に包まれ、茫漠とした景色の中、姿を現した松の持つ対照的に力強い描線に圧倒されます。長谷川等伯 国宝「松林図屏風」、東京国立博物館2階国宝室で117日までの展示です。