今日の外来に、少し遠方から来てくれた患者さんがいた。
遠方といっても初台だから、それこそ電車でも訳はない。しかし多少足こちが弱っている母親をまだ乳飲み子を抱えた娘が連れてくるのだから、電車しんどい。だからわざわざタクシーを使ってきたのだという。
何の気なしに、当院はなんでお知りになりました。と私が訪ねると、娘が、
「ホームページです。」と答えた。
母親が認知症じゃないかと心配になって・・・明日は検診に行くけど、その前に高齢者の診療に詳しいところで、見てほしかったから・・というのが来院の理由だった。
しかし連れてこられた母親は困惑気味だ。母親にとっては不本意な受診だったようだ。
娘が言い訳する。「無理やり私が連れてきたんです。」
一人暮らしの母親はもともと不精な性格。最近それがさらに講じて料理もしなければ、片付けもしなくなった。約束を忘れることもある。という。
「どんな生活をしているのですか?朝は何時におきますか?」私は母親に事細かに生活の具合を尋ねた。私はなるべく母親に自分で生活を話してもらいたかったのだ。その理由は、一つには自分の生活をどのように管理できているのかを知るため、もう一つは母親の気持ちがほぐれてくれるのを期待したからだ。
そして気持ちが十分ほぐれたところで、それではご高齢の方にいつも質問させていただく質問用紙がありますから、それに従って質問させていただいてもよろしいですか?と切り出すと、快くうなづいてくれた。
「これは記憶や検査のチェックも兼ねているので、少し難しい質問もありますが、できなくても気にしないでください。」私は母親の気分が変わらないように配慮しながら、MMSE検査をしてもらった。
結果は28点、30点満点だから、ほとんど満点だ。つまりこの検査だけでは認知症とは全く言えない。
「すごいですね。こんなにできる人はほとんどいませんよ。」私の言葉に、親子ともに顔をほころばす。
母親が認知症ではないと言ってほしかったから連れてきた。と娘は私に来院の意図を打ち明ける。
確かにMMSEでは認知症とは言えない。しかし行動が少し変化していることは確かだった。これからの生活の仕方や注意点だけをお話しして、診療は終了した。
当院がホームページをリニューアルしたのは昨日のことだった。それがさっそくこのような縁につながった。
私もびっくりしたが、もともとこのような段階のご高齢の方の生活不安、その後の療養不安に寄り添うことが当院の目標だ。
適切な縁結びができた新しいホームページの在り方に感謝した。