医療経営

長年地域医療機関を運営して来て、しかも自分一人や少数の医療機関ではなく多数のスタッフが集う医療機関を運営して来て、思うことがある。

今の時代、医療経営はまさに「綱渡り」であるということである。

一本の綱を渡り切るのも難しいが、その一本を渡り切るとまた違う綱を渡らなければならい。そして綱を乗り継ぎながら、時代変化という坂道を登っていくようなものなのだ。

一歩踏み外せば、奈落の底に落ちるだろう。

それぞれの綱にはそれぞれの厳しさがある。

医療トラブルから医療訴訟へと進展することもあるだろう。

保険者から目をつけられて、保険医療が立ちいかなくなることもあるだろう。

経営的に破たんして、にっちもさっちもいかなくなることもあるだろう。

そのほか、常時スタッフが集まらない、患者さんが集まらない。資金がショートする。など実にいろいろな心配が加わる。

 

高齢化の進展に合わせて急激に診療報酬体系や社会背景も変化しつつある。

だから一つの現場に適合できても、永住することは許されない。

次々と新しい現場へ適合していかないといけないのだ。

 

営業形態を限定し、スタッフも少なければ、ある程度気が楽だが。

複数のスタッフを雇用して、場を広げたとき、重量挙げのバーベルのような重荷を背負って綱渡りをするようなものなのだ。

 

今日若手の医療経営者と話をしていて、とても感心したことがある。

 

私が、何十年もかけて会得したこれらのことを、いともたやすく会得しており、しかもすでに解決策を持っているのだ。

 

だから余計な規模化はせずに、資産価値を高めることに集中して、資産価値が最も高い時に効率よく手放すべきというのだ。

そして次の医療機関づくりに行くというのだ。

まことにもって正しい。

 

しかしなぜか重荷を下ろせないでいる自分がいる。

むしろ新たな重荷を背負おうとする自分がいる。

 

そういうのをサガと呼ぶのだろう。

むしろ多くのスタッフがいてくれること。それこそが私の励みになっているのだ。