自由になること

当院では今月から禁煙外来を始めることとなった。

トータル12週間、その間計4回通院し、ニコチン依存症から離脱するためのプログラムだ。ある一定の基準を満たせば、健康保険も適応になる。3割負担の患者さんで、おおよそ2万円の自己負担で禁煙が可能になるというのだ。

 

かく言う私も4年前まで1日30~40本と大量に喫煙していた。かれこれ30年以上の喫煙だ。

その間、何度も辞めようとして辞められなかった。むしろ、やめようとすればするほど喫煙本数が増えたことを思い出す。

 

最近、ニコチン依存症の機序も最近では明らかになっている。

脳内のニコチン受容体にニコチンが結合することでドパミンという快感をつかさどる物質の放出を促す。だからニコチンが快感になるという記憶と結びついて中毒化するというのだ。

 

そもそも人間の意思の力は悲しいほど弱い。このように脳の代謝的変化を生じているという中毒という症状から離脱するには、覚悟や強い意志は無力ではないが、まったく十分ではない。それを補うのが薬物治療だ。薬物により脳内の代謝を変化させながら、習慣の是正や油断に対する継続的努力が必要なのだ。

 

薬物治療と支持療法。そして本人の努力と周囲の協力。これらが相まって禁煙ができる。そうだとしたら、それこそが在宅医療が得意とする複合療法である。

 

禁煙にはドパミンが出ない。しかしドパミンなしだが自由で健康的な生活ができるのだ。

 

そうはいっても、そして今禁煙していても、私はかつて喫煙者だった。だから私はいつまでも禁煙者なのだと思っている。そしてまたいつしか再び煙草を咥えていないとは限らない。

 

いま、私は仲間でもある喫煙者にやさしい禁煙外来をしてみたいと思っている。