谷川岳

谷川岳のふもとまで雪の中お鍋をやりに行ってからしばらく経ち、そう言えばふもとまで行って頂上行かないのもなんだなとえっちらおっちら登りに行ってきました。土合近くのロッジで一泊、翌日、ちょっと早めに出発しました。

前回お鍋をやった日とは打って変わってこの日は晴天。ロッジのスタッフが初めてここに来た年は、12月から2月まで1日も晴れ間を見たことがなかったというほど、冬の快晴は珍しく、なんてラッキー。谷川岳に登る者、ロープウェイ駅付近で雪崩遭難時のビーコン操作を練習する者、滑落した際の姿勢や動きを練習する者、スキーヤー、ボーダー、いろんな人々が天神平に集います。そんな中粛々と天神尾根を進みます。ところが右足にすでに靴ずれが。ほんの小さな傷ですが、これが曲者の痛さ。一足ごとに顔をしかめながら登っていきます。

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肩の小屋付近のケルン道標。時折吹き付ける風に痛めつけられながらもここまで来れば頂上はもうすぐ。

ケルン道標

ケルン道標

この日は天気はよかったものの、時折突風が襲いかかり、そのたび風に背を向けなんとかしのぎます。強い風のせいで積雪に風紋ができていました。

風紋

風紋

頂上に到着しました。まるで映画スターのようにこの1本の山頂標を代わる代わるいろんな人が写真を撮ったり、仲間揃って記念撮影しています。ぼくもその一人で、写真を一枚。登っている内は暑いのですが、気温は氷点下なので、止まった瞬間身体は冷えてしまいます。撮影のために手袋を外すと3秒後にはかじかんで指が痛くなります。

谷川岳山頂

谷川岳山頂

写真を撮ったら凍える前に下山します。しばらく下って振り返るとさっきまで登っていた谷川岳が見えてきました。この写真の一番てっぺんに立ったんだなと思うと感慨無量です。こうして人は山にはまっていくのであります。

谷川岳

谷川岳

来年もよろしくお願いします。

子の権現、竹寺

先日山で転んで大腿部を強打、痛さのあまり歩き方がしばらくおかしいままでした。そうだ、足が良くなるように足にご利益があるといわれる子の権現(「ねのごんげん」と読みます)に参ろう、そしてついでと言っちゃなんだけれども、インフルエンザやノロウィルスも流行りつつあるので、疫病予防の神様牛頭天王を祀る竹寺まで足を伸ばそう、そんなクリニック勤めの人間にあるまじき、神仏頼りの巡礼行脚。いよいよ冬も本番。

その前の週、2週続けて2000m以上の山に登っていたので、今日は軽い寺巡り、そんな週末もよいではないか、と思って臨んだら、あにはからんや、いつもと同じような山道。

完全に山道

完全に山道

西武池袋線で西吾野へ。そこから上の写真のような山道を歩いて子の権現へ。

子の権現到着。仁王様がにらみをきかせる中入っていきlます。

子の権現到着。仁王様がにらみをきかせる中入っていきlます。

「早く足が治りますように、これからも山に登れますように」切実な思いでお参りします。

鉄製の巨大わらじ

鉄製の巨大わらじ

絵馬も馬ではなくわらじであったり、だいたいすべてが足腰関連です。子の権現を出て展望のいいところでお昼ごはん。

ワインと昼食

ワインと昼食

ちょうどトレラン大会が開かれており、何十人もの人たちが目の前を走り過ぎていきます。「あ、ワインだ、いいな」「おれ、そっちに混じりたい」など数十人にいじられる昼食。なかなか味わえない境地です。昼食だというのにじゃがりこが置いてあるのが不思議かもしれませんが、じゃがりこにお湯を注いでつぶすといい感じのマッシュポテトが出来上がるのでシチューに投入してコクを出したりします。山料理のおすすめです。

竹寺

竹寺

竹寺は牛頭天王を本尊に祀る神仏習合が残る珍しいお寺です。旅をしていた牛頭天王に辛くあたった金持ちの巨旦将来(こたんしょうらい)、優しく当たった貧乏な蘇民将来(そみんしょうらい)。牛頭天王は蘇民将来に辛くあたった巨旦将来の一族郎党滅ぼす旨告げます。巨旦将来のところには娘が嫁いでいるとの訴えに、ではその娘に茅の輪をつけて目印にしろ、その目印のないもの全員滅ぼす、と。それ以来茅の輪をつけたり、「蘇民将来子孫也」という御札を貼ったり、茅の輪をくぐったりするようになりました。伊勢地方に行くと正月に関係なく、家々の門口にしめ縄飾りがあり、そこには「蘇民将来子孫家門」などと書いてあります。

面白いことにこうした神話・伝説は世界中にあり、有名なところではギリシア神話のゼウスとヘルメスの旅などが同じモチーフの物語を伝えています。

そんなこんなでご利益のおかげでしょうか、足はすっかりよくなり、インフルエンザにもいまのとこかかっておりません(もちろん予防注射を受けていますが…)。

 

お鍋の季節

12月ももう半ば、街はすっかり冬。冬といえばお鍋の季節。仲間や家族、あるいは一人でも熱々のお鍋がおいしい季節です。外の寒さに対比して鍋のあったかさがよりおいしさを加えてくれるから冬のお鍋は格別なのかもしれません。であるならば、寒ければ寒いほど鍋はおいしいのではないか。
そんな仮説を実証するための大人の社会実験。そうだ、雪の中で鍋を食べに行こう。この季節で雪と言えば谷川岳(そうかな?)。早起きして土合駅を目指します。
土合駅の下り線ホーム。486段の階段を上り、地上に出るまで10分くらいかかるといわれる通称「日本一のモグラ駅」。登山は駅から始まっていると言っても過言ではありません。

日本一のモグラ駅

日本一のモグラ駅

 

確かに雪を期待してここに来たものの、明らかにやり過ぎ。行くも地獄、引くも地獄の鍋行脚が続きます。「これがホントの氷結」、ただこれをやりたいがために三脚に缶チューハイを持参したものの、思ったほど面白くなくてがっかりです。それにどう見ても鍋をやりに行くというより、遭難してると言った方があってそうです。外は吹雪、気温は零下。しんしんと降り積もる雪が足あとを消していきます。行方不明なんて言葉も浮かびます。雪が吹き込んでくるので目をあけているのも辛い…… 鍋担いで、ぼくはなにやってんだろう。そもそもの根本的な疑問すら浮かんできました。

手に持っているのはチューハイの「氷結」

手に持っているのはチューハイの「氷結」

それでも鍋をやるんだ、鍋をやるためにここに来たんだ、自分を鼓舞します。あたりを踏み固め、整地。手袋脱いだら凍えそうなのは重々承知の上で、泣く泣く外してかじかみ震える手でリュックから鍋道具を取り出します。冷たくて触るのもためらわれるほど凍てついた鍋が容赦なく手のひらから人間の暖かみを奪い去っていきます。なんとかすべての用具や鍋の具材を取り出したところでぼくの気力は底を尽きます。「天はわれを見放した……」心が振り絞る静かな慟哭の声を聞きながら撤収を決意します。

鍋道具一式

鍋道具一式

来た道を戻る後ろ姿もどこか悲しげです。

うつむきがちな姿勢がすべてを物語っています

うつむきがちな姿勢がすべてを物語っています

土合から水上へ、そして水上から朝と逆に上り電車で高崎方面へ向かいます。敗北感と挫折感がやすりがけした心はざらつき、悲しみが群馬全体を覆い尽くすようでした。そんな時、闇を払う光の一閃が脳内を貫きます。そうだ、新前橋なら利根川に近いじゃないか、利根川の河原で鍋をやればいいんじゃないか。雪こそ降ってはいませんが、そこは前橋、寒さは東京の比ではありません。寒い中鶏鍋を作ります。上州名物からっ風が吹きすさぶ中、はふはふ言いながら熱いお鍋を食べます。鶏肉が、鶏団子が泣きたくなるくらいおいしい。寒い中で食べるお鍋、おいしいと同時に、生命をつなぐ糧という感じ。ああ、やっぱり寒い中での鍋は最高でした。

坂東太郎を背景に鶏鍋

坂東太郎を背景に鶏鍋

結局寒い中でのお鍋はおいしいけれど、やり過ぎは辛いだけだというごくごく当たり前の教訓を得た休日でありました。まだまだ修行が足りません。

西沢渓谷

JR中央線塩山駅からバスに揺られること1時間ちょっと。笛吹川上流にその姿をくねらせる西沢渓谷に到着します。紅葉のポイントとして有名で、まあ大変な賑わい。

西沢渓谷の紅葉

西沢渓谷の紅葉

観光スポットとして人気らしいのはいいんですが、整備された遊歩道完備と勘違いされたのか、どう考えても場違いなハイヒールやピカピカの白い靴で歩いて困惑を隠せない観光客も少なくありませんでした。ぼくは登山のあとだったのでトレランシューズだったのですが、それでもぐしょ濡れになってしまいました。

ナメ滝

すべすべした岩肌を水が流れる渓谷美

渓谷美が続きます。

七ツ釜五段ノ滝

七ツ釜五段ノ滝

西沢渓谷白眉の七ツ釜五段滝。大変美しい風景でした。東京からもそれほど遠くない西沢渓谷、紅葉の時期ぜひお薦めです。