独居の方の退院という現実

もしあなたが退院した時に、誰もいない階段であがるしかない4階の居室に帰らなければならないとしたら・・・

もしあなたが退院した時に、暖房もない、毛布しかない部屋に帰らなければならないとしたら・・・

もしあなたが退院した時に、1日2回の冷え切った配食弁当しかない食べられない部屋に帰られなければならないとしたら・・・

もしあなたが退院した時に、帰る部屋がいわゆるごみ屋敷だったとしたら・・・

帰ってきて、心底よかったと思えるだろうか?

 

無題

地域の社会生活が豊かになって初めて、自宅療養の意義が広がるとして、私たちにできることは何だろうか?

ファストドクター見学記

ファストドクターという会社がある。https://fastdoctor.jp/corporate/

夜間や休日、東京23区全域をカバーする往診プラットホームを作っている会社である。

かねてから当院で行っている「よりそいコール」に学びたいと言って、昨年9月にファストドクターの方々が当院を訪ねてくださったことからご縁が広がった。
そして12月には、彼らは実際当院の往診現場に見学にも来てくれた。
そして今回は私が今日1月5日、まだ正月気分の抜けない日曜日にファストドクターの実際の往診現場を見学に伺った。

彼らの発想や行動力には驚かされる。

本日だけで21台の往診車が都内を走り回っているという。往診件数だけでも本日だけで200件程度しかし電話はそれ以上。その中の一つのルートに同乗させてもらったが、昼過ぎから6時過ぎまで計7件の往診は、東京を縦横無尽に走り回る。新宿区をスタートし台東区から文京区、新宿区、杉並区、足立区などを駆け巡りながら、1件1件丁寧な往診が印象的だった。利用した患者さんからはこんなシステムがあるとは知らなかったとか、助かったという感謝の声が尽きない。
膨大な往診件数だが、コールセンターにかかる電話のうち往診に結び付くのは約2割に過ぎないという。電話相談だけで終わったり、病院紹介に結び付けたりすることが多いという。そしてこれは往診が必要だと医師が判断するものだけ往診をしているという。

季節柄インフルエンザなど発熱性疾患が多いが、胸痛や頸部痛など循環器救急を疑う人たちの往診依頼も少なくない。もしこの寒空、休日のごったかえす病院に行かなければならないとしたら、そしてずっと待たされたりしたらと考えると逡巡する方は少なくないだろう。往診でできることには当然限りがある。いわゆる隠れた病気を見つけたり、根本治療は往診は困難だ。しかしなるべく円滑に社会生活を営むための医療的サポートと往診をとらえたとき、いわゆる救急外来とは異なった往診の意義が見えてくる。

ファストドクターは今岐路に差し掛かっているという。社会的ニーズに後ろ押しされているが、一方で既存の医療との整合性や合理性が問われているというのだ。
しかし、若き医療者たちの大胆な発想と行動力。日本の地域医療に求められる活力とは何だろうか考えさせられる一日だった