医者のくせして・・

普段から多くの患者さんの検診や健康指導をしているにもかかわらず、自分では億劫で、検診を受けていないという医者は少なくない。

私も、自分から率先して受けることはない。しかし、自分の人生の節目を占ったりするときには、自ら人間ドックに入ったりする。

数年に一度は、そういう節目を迎える。前回は3年前、その前はさらに4年前だった。たいていは人生の悩ましい時期だ。今死んではいけない。今からしばらくは頑張らなければならないと思うとき、私は検診を受けているのだ。

最初の時には、何も異常はなかった。

前回では、少し異常が見つかり。

今回は紹介状までもらう羽目になった。

しかしまだ高をくくっている自分がいる。

「この年になれば、少しの異常ぐらいあって当たり前・・・」どうせ受診したって、結論だってわかっているし、受診するだけの時間ももったいない。

そんな言い訳をしている自分がいる。

私はだらしない患者さんを叱らない。なぜなら自分が一番だらしない患者だからだ。

在宅医療とは?

在宅医療をしていると、

こんなことまでしてもらえるのか?

これなら病院に行かなくても済む!

といわれることが多い。

点滴をしたり、輸血をしたり、何らかの医療処置をしたときにそういってもらうことが多い。

 

がんや難病、高齢による衰弱など自宅での療養を余儀なくされる疾患や事態は様々。

しかし誰にも共通するのが、生活の不安、介護の不安、そして医療の不安だ。

動けないのに生活できるのか?

食事や排せつに困ることはないのか?

家で適切な医療が受けられるのか?

 

そういう不安にこたえることこそが、在宅医療の大きな役割になっている。

 

そのために点滴や輸血を必要とすることもある。

酸素や呼吸器、胃ろうの管理などを擁することもある。

 

でもすべては、生活の不安を解消しながら、療養の意義を高めるためのものだ。

 

ともすると、どの職種が、何をするのかなどが議論になることが多いが、私たちは、生活の質を高めることこそが、在宅医療の役割だと思っている。

e-bookのご紹介

昨今地域医療の充実が叫ばれる中、かかりつけ医の重要性が増してきているという。

様々な医療政策の中で、かかりつけ医を中心とした医療提供体制の図も多用されている。

しかしかかりつけ医という言葉はよく聞いても、かかりつけ医とは何なのか、具体的なイメージができにくいという。

 

なぜなら、自分にはかかりつけ医がいないからだ。

 

ちなみに東京都医師会がかかりつけ医についてかなり明確にしている。

簡潔にまとまったものなので、ぜひご覧いただきたい。

https://www.tokyo.med.or.jp/counseling/primary_care/dr_choice/04.php

 

さて、このたび私たちが考えるかかりつけ医(つまり私たちはこんなかかりつけ医になりたいという理念など)についてまとめてみた。

当院のHPにあるE-BOOKに「無理無駄のない医療を受けるためのかかりつけ医ハンドブック」をぜひご覧いただきたい。

 

http://www.hiro-clinic.com/book/regional-medical-handbook/

 

私たちのかかりつけ医とは、一言でいうと”自分の社会生活を支援してくれる医療’となる。

 

未病の時には疾病予防や生活相談で、自分の社会生活を応援してほしい。

何か病気になった時には、身近な相談や迅速な初期治療で速やかに社会生活が営めるようにしてほしい。

糖尿病や高血圧など慢性疾患になった時には、その時なりの生活の仕方のきめ細やかな指導や助言をしてほしいし、無理のない医療をきちんと提供してほしい。

だんだん高齢期になってきたら、自分の今後のいくすえについても相談に乗ってほしい。

さらに虚弱化した場合は、通院できないだろうから、時には往診などもしてほしい。

さらに寝たきりになったら、無理なく家族に負担をかけず、自分も苦しまずにいい人生の締めくくりができるように支援してほしい。

 

このようにすべての時期、時期に自分の社会生活を応援してくれる医師を私はかかりつけ医と呼びたいし、そういうかかりつけ医療が皆が受けられる世の中になってほしいと思う。

定年がないから・・・

昨日私はある市民の集会でお話しする機会をいただいた。

今後の過ごし方を真剣に考える意識の高い高齢者の方々の集まりだった。

 

そこで、同じ出身大学の先輩医師に会うことができた。

今年86歳になる老医師は、昨年までスキーをやっていたという。

さすがに骨折が怖くなり、今年からは辞めたと快活に笑う。

今夢中なのは、フルート、以前はサックスをしていたが、重くなってやめた。

今でもダンスのレッスンは自分も受けているし、ほかの人にレッスンすることもある。

自宅は逗子の郊外だが、都内の病院の勤務や検診の仕事などを続けているので、ほとんど毎日仕事もしているという。

 

職業として医師を選んだ理由は、定年がないから‥という理由だそうだ。

確かに定年がない。しかし仕事は一様ではなかった。

大学卒業後は、外科医としての研鑽を積んだ、その後病院でさんざん手術をしていたという。

いつしか高齢になり、メスをおろし、「なんちゃって内科医」としての道を歩き出す。

そのうち検診の仕事など、いろいろ仕事の容は変化している。

常にその時のニーズに合わせて変容し続けてきたからこそ仕事が続いているのだろう。

 

老医師に教わる、人生訓・・・

それは常にその時の自分を生きることだった。

そして、それこそが今後の高齢化社会での生き方だと・・・