問題の書

世界に先駆けて日本では高齢化が進んでいることは周知の事実である。そして今や100歳以上まで長生きすることも珍しくはなくなりつつある。

実際当院でも、最近100歳以上の患者さんが増えている。今後はさらに100歳以上まで長生きする人が増えることも予想されている。

それは決して他人ごとではなく、私たちも100歳以上になるかもしれない。

ましてや子供たちの時代には・・・

しかし実際、これだけの長命を生ききるための戦略を、明確に持っている人はいないのではないだろうか?

「LIFE SHIFT  100年時代の人生戦略」という本に出合った。

無題

 

本書は、これまでの人生モデルとは全く異なる人生100年時代の人生モデルを明確に提示している。その理由とともに・・・

すぐに消化し、実行できる人は少ないかもしれない。しかし本書が語っていることが真実であると感じる。

自分たちが、今そして将来を、どう生きなければならないか?

痛切に考えさせられる問題の書である。

惜しむらくは、本書が日本人によって書かれなかったことである。

生きる

母一人、子一人。

幼子を抱えた母親が病気になった。

ALS・・筋萎縮性側索硬化症・・神経難病だ。

徐々に運動機能だけがむしばまれていく。手足が動かなくなり、身動きができなくなる。いつしか嚥下も、発語もできなくなる。そして最終的に呼吸も・・その間、意識は清明だし、知覚も正常。外界とのコンタクトができなくなって。最後には自分の体という牢獄に閉じ込められていくという残酷な疾患である。

死ぬこともできない。どこまでも残酷な疾患であるとわかった時、早く死なせてほしい。という人が多い中、その母親はとことこん生きる決意を下した。

「息子が一人立ちするまで何が何でも生きる。そのためには呼吸器をつけることも、胃婁をすることも辞さない。たとえ何もできなくても息子のそばに居続けよう。」と彼女は決心したという。

しかしまだ幼い息子は、そんな母親の思いをすぐには受け入れられなかった。

なぜ自分には父親がいないのか?なぜ母親は何もしてくれないのか?ほかの友達に比べてなんと自分は不幸なんだろと、楽しい思い出など一つもないといって。不登校になった時期もあった。

声も出せなく、呼吸も苦しい母親は、そんな時も息苦しさの中、息子を信じて見守っていた。

その間もその後も、何度も、ありえない急変を彼女は乗り切った。

いつしか息子は、誰よりも母親の介護をするようになる。

その生きる執念が、どこから生まれてきたのか?私にも到底理解できなかった。

しかし、窮地に追い込まれたびに彼女は復活したのだ。

その間息子も成長した。高校三年生になった時、頑張り続けた母親が突然息をひきとった。

その時息子は言った。

「僕は大丈夫だよ。お母さんから、命をもらったから、何があっても大丈夫。」と。

 

皆さんに知っておいてほしいことがある。

いかなる病気も、命を奪うことなどできないのだ。

 

沈没する船の上で

今まさに沈没しようとする巨船の上で繰り広げられているドラマがある。

少しでもいい席に座ろうと、人と争い、意気込んでいる人や、少しでもいい仕事をしてその船の上での地位の向上を目指そうとする人・・

安泰な船の上なら、そんなドラマも人間らしい。

しかし、傾きはじめて、このままでは沈没しかねない船の上では、滑稽でしかない。

そんな目先のことにとらわれずに、まずは必死に船の傾きを止めて、沈没しないように、乗客も船員も一丸となって、努力すべきでなのだ。

実はそれが今の日本なのだ。そんなことを、感じさせる本に出合った。

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元厚生労働官僚の香取照幸氏の最近の著作である「教養としての社会保障」である。

社会保障という膨大な体系がなぜ必要なのか、そしてどのように社会の安定化に役立っているのかをこれほどわかりやすく論じた著作は珍しい。

もちろん、わたしは社会保障費が年々増加していること。赤字国債が増えつつあること。などはわかっていた。それでも事の重大さが実感できなかった。

しかし平易な文章であるが、本書が述べている事実は衝撃的だ。

読後、「教養としての社会保障」という平易な題名、そして全く飾り気もない表紙に、むしろ強烈なメッセージが込められていることに気づかされる。

本書はまさに「憂国の書」である。

道東旅行

夏休みの後半は、駆け足だったが、家族で、釧路から入って、阿寒湖、そして知床、網走、中標津など道東を回ってきた。

途中雄大な北海道の自然を堪能し、キタキツネの出迎えを受けるなどして、短期間だったが、十分気分転換をすることができた。IMG_0113 (002)

東京近郊はおろか、本州にもない自然や風物に触れながら、今後の日本のいく先とともに、子供たちの将来の姿を重ね合わせる。

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自分は、子供たちの世代に対して、そして日本にどんなバトンをつなぐことができるのか…という思いとともに・・