在宅高齢者のコロナ対策

当院では多くの高齢者の方々の外来及び在宅診療を行っている。

高齢者にとってコロナ対策は実に難しいが、今の時点での対応の仕方について考えてみた。

1・コロナウイルス感染予防をしながら、どうやって活動性や社会性を落とさないようにするのか?

高齢者はただでさえ引きこもりやすい。不要な外出や人との接触を防ぎながら、社会性や活動性をいかに保つためにどうするか?が課題だ。ただ家に引きこもっていればいいとは言えない。適切な運動機会や人との交流機会を確保していくことはとても大切なことである。3月8日現在、小中高など学校などが休校になっているが、ほとんどのデイサービスやデイケアなどは継続されているのはありがたい。しかしいつまでそれが続くのか?訪問でのリハビリの活用やテレビ電話などでの通話機会の確保や身体運動を保持するようなテレビゲームなどの活用も必要かもしれない。どこまで活用されるかは、千差万別だろうが、高齢者に電子機器は似合わないと思っていることが多いが、これを機会にそのような機器も検討したい。

 

2・風邪や逆流性食道炎など高齢者によくみられる呼吸器症状とコロナウイルス感染をどう区別するか?

風邪や誤嚥性肺炎では、発熱、咳、痰、呼吸苦などが出現し、しかも高齢者の場合遷延化しやすいという特徴がある。もし身近にコロナウイルス感染者がいたような高齢者の場合は、早目にPCR検査ができる施設への搬送が望ましい。しかし接触歴がない方の場合、風邪や肺炎の疑いがあるから今はコロナが心配だからと言って、みんなコロナ対応医療機関へ搬送するわけにはいかない。今後迅速診断キットや治療薬、ワクチンなどが開発されれば在宅でのコロナ誘発肺炎の治療も可能になると思うが、それまでは接触歴をしっかり把握しながら、適切な対応を心がけたい。

現時点では従来通りの風邪や肺炎治療の流れを優先し

1・自宅での対症的治療を早めに行いながら、

2・重症度や介護生活状況を鑑みて、一般病院入院治療へ切り替え

3・そちらでの診断検査などによって、コロナ対応医療機関治療への移送

という流れがリーズナブルと思う。

しかしさらに今後は様々な社会情勢を踏まえたきめ細やかな対応が必要になるだろいう。まずはコロナ患者さんとの濃厚接触歴の有無に注意しながら、早めの往診などで、速やかな自宅での加療を開始して、なるべく機能を落とさずに、早目に直すように努力するように努めたい。

超高齢者の急性期治療のありかた

山王病院で学びました。

先日山王病院で開かれた患者さんの退院前カンファレンスに出て驚愕した。

ぎりぎりのところで生活している超高齢者の方、しかも重症肺炎での入院だったが、速やかに病状が改善したばかりではなく、ほとんど生活機能低下を認めなかったからだ

なぜそんなことができるのだろう。その病院では下記のことが実践されていた。

1・家族の付き添いが認められているので、自宅介護がそのまま入院先で確保されている

2・生活機能を落とさないため、入院初日から看護、リハビリなど積極的で集学的なアプローチがされている。

3・入院当初から経口摂取を止めないなど、できる機能を取り上げない治療を実践していること

4・虚弱高齢者の特性に詳しい治療医に恵まれている。

すべての医療現場でこれらを実践することは難しいだろう。
またすべての患者さんにこのような対応ができるわけでもない。人手も必要だろうし、家族の協力なども不可欠となる。しかし虚弱高齢者が社会生活維持するために、どういう急性期医療が必要なのか、私は初めて教わった気がした。

まずは生活機能維持改善を優先すべきだったのだ。

私にとっての在宅医療の師である佐藤智先生の言葉が、頭を駆け巡った。「病気は家で治すもの。」

私たちも、もっと積極的に、在宅でこのような生活機能維持改善型急性期治療を目指すべきだと学んだ次第である。

かかりつけ医療を考えたとき、真っ先に思い浮かんだのは、「転ばぬ先の杖」という言葉だった。

人生にはいろいろな出来事がある。その中で、病気や死、障害、衰弱などは最も大きなイベントになる。予防し、あらかじめ対策を立てながら、こんなはずではなかった。と思われないようにナビゲーションすること。転ばぬ先の杖になることがかかりつけ医療の本分だと思ったからである。

面白い画像に出会った。

 

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転ばぬ先の杖、転んだ後も杖・・・

ネットで拾った画像だが、これこそがかかりつけ医療の本分にあっているように思った。

予防や未然の対策だけではなく、いつか誰にも訪れる障害期や衰弱期にも、人生を支える医療。それがかかりつけ医療だと思う。

当院の新型コロナウイルス対策

当院では新型コロナウイルス対策として、下記の対応を開始しました。

1、 感染症を疑われる方の専用の出入り口、診療場所の確保と一般の患者さんとの完全分離
外来受診をされる方にとっては、いろいろなご不安がある時期だと思います。当院では皆さんに、安心して受診していただくように、発熱などで受診される方は、別個の出入り口からの入退室をお願いしています。(ご受診前に発熱の有無などお知らせいただければと思います。)

2、 不要な外出機会を減らすための、外来受診頻度のご相談
薬剤の長期投与などのご相談に適宜対応すると同時に、受診間隔について臨機応変に対応させていただくようにします。

3、 24時間電話対応の強化と往診対応の充実
当院におかかり方の健康相談を24時間365日対応させていただきつつ、適切な医療機関へのご案内や、受診時の診療情報提供や、必要時には当院医師による往診対応など行ってまいります。

このような対応で、地域の皆さんが少しでも安心して暮らし続けることができるようにスタッフ一同頑張っています。
よろしくお願いいたします。