リハビリ小噺 ⑧

訪問リハビリの現場では日々、様々な会話が繰り広げられています。

少しだけご紹介させていただきます。

 

訪問リハビリは可能な限り

生活に即したリハビリを提供することが求められています。

食事やトイレなど身の回りのことを行う動作練習ももちろんですが、

それよりも範囲を広げて、洗濯や買い物なども介入の対象になっています。

 

Hさん(90代女性)とはリハビリの時間に屋外歩行練習を兼ねて買い物をしています。

あまり長い距離を歩くのは難しいのですが、

近所のコンビニまで安全に買い物に行くことが当面の目標です。

 

今日も買い物に行ったHさん。

お会計の際になじみの店員さんに話しかけています。

 

Hさん 「今ね、リハビリの歩く練習で来ているのよ。この人リハビリの先生。」

店員さん「ああそうなんですね」

Hさん 「まだ一人で来るんじゃ自信ないのよ。」

店員さん「がんばってくださいね。」

 

何気ない会話です。

ところが…。店を出てHさんの一言にとても驚かされてしまいました。

Hさん 「リハビリだってことはちゃんと言っておかないとね。」

私   「えっ、なんで?」

Hさん 「若い彼氏連れて歩いてるなんて言われたらいけないからね。」

私   「!?

 

Hさんの元気の秘訣が少しだけわかった気がしました。

 

3cmの壁

先日、嬉しい出来事がありました。

訪問リハビリで伺っている、元々両手脚に軽度〜中等度の麻痺のある患者さん。
基本車椅子の生活でしたが、自宅内ではトイレに行く時だけ3cmほどの段差を乗り越えなければならないため、少しの距離なら歩けて、その段差も手すりに掴まれば歩いて越えられている方でした。

が、今年の始めに転倒してしまい、大腿骨を骨折。
入院して手術を受け、歩行練習もされて入院前と同じくらい歩けるようになって帰ってこられていたのですが、その3cmの段差だけは越えられないと言うことで、日中お一人になってしまう時にはヘルパーさんが定時でトイレ介助に入る事になっていました。

訪問リハビリでは、またトイレに一人で行けるようにと、歩行練習と併せて段差を乗り越える練習も計画していたのですが、不安感が強く練習すらままならない状態…。
このままでは勿体無いと思いながらも、ヘルパーさんに決まった時間にトイレに連れて行ってもらう生活にも慣れてしまい、ご本人も”一人でトイレに行けるようになりたい”という想いはどこかへ行ってしまったかのように思われました。

そんなある日、ご家族が帰られる前に便失禁をしてしまったそうで、仕事で疲れて帰ってきたご家族を怒らせてしまったとの事。
「私だって、行きたいと思った時に自分でトイレに行ければこんな失敗はしなかったのに」と悔しそうに私に報告して下さり、その日からその方は変わりました。

今まで何度促しても拒否されていた段差の昇降練習にも取り組まれ、やってみるとあっけないほど簡単に段差を乗り越えられることが分かり、そこからは以前の感覚を思い出しながら、段差の手前からトイレまでは歩いて行けるようになりました。

ご本人もちょっとずつ自信が付いてきたのか、ご家族がいらっしゃる時には車椅子介助ではなく歩いてトイレまで行くようになり、ご家族にも褒めてもらえたと、今度は明るい良い笑顔で報告してくださいました。

リハビリに携わる者として嬉しい瞬間でしたが、そのたった3cmの壁を乗り越えるための、心の支援が今まで出来ていなかったなぁと、自分自身の対応を反省した一件でもありました。

【お】

バイザー会議へ出席しました

ちょうど1年前の今日

同じ題名でblogを更新しました。

バイザー会議へ出席しました

 

先週末

昨年と同じように

バイザー会議へ参加しました。

あれからまた1年経過したかと思うと

つくづく時間が過ぎるのは早いと感じます。

まさに

光陰矢の如し。

 

年を重ねるほどに時間が過ぎるのが早くなると

患者さんは

口をそろえて仰ります。

「人生は超特急」と

どなたかに言われたのが

私は非常に印象に残っています。

 

さて

このように年齢を重ねるにつけ時間が早く過ぎるように感じることを

ジャネーの法則というそうです。

生涯のある時期における時間心理的長さは年齢の逆数比例する(年齢に反比例する)。」

ということを定義した法則だとのこと。

 

また

このように感じる理由として

  • 新しいことをする機会が減少するから
  • 同じことの繰り返しが増えるから

ということも要因の様です。

 

わが身を振り返っても

思い当たる点は多々あります。

 

少しでもジャネーの法則に抗うためには

些細なことでも新しいことに目をむけ

習慣化された日常を疑うことが必要なのかもしれません。

そうすることによって

日々を充実したものとして過ごせれば。

 

そんなことを

実習指導者会議に出席して感じました。

思えば

実習生だった頃

実習期間がとても長く感じたのも

毎日が新鮮すぎたからなのかもしれません。

しかし

そのぶん充実していたこともありました。

今度来る実習生の子達にも

少しでも充実した実習となることを願っています。

 

皆様にはお世話になることもあるかと思いますが

よろしくお願いいたします。

 

 

 

リハビリ小噺 ⑦

訪問リハビリの現場では日々、様々な会話が繰り広げられています。

少しだけご紹介させていただきます。

 

日が落ちるのもすっかり早くなり、秋の深まりを感じる今日この頃。

色々と恋しくなるものがありますよね。

お酒を召し上がられる方なら「赤ちょうちん」もその一つではないでしょうか。

仕事帰りの一杯を楽しみにされていた方も多いと思います。

 

今も毎日お酒を欠かさないGさん。

現役時代も足繫く通った「赤ちょうちん」があったそうです。

 

Gさん「仕事場からの帰り道にね、気に入った飲み屋がありましてね。」

私  「ほう。」

Gさん「そこの大将ともなんとなく波長が合いましてね。よく行きましたよ。」

私  「『よく』ってどのくらいの頻度ですか?」

Gさん「そりゃあ毎日ですよ。」

私  「毎日ですか!?」

Gさん「もちろんそうですよ。だって帰り道にあるんですよ。」

私  「はぁ…。」

Gさん「素通りなんかできますか?そんなことしたら申し訳なくて。」

奥様 「まったく…。」

 

「赤ちょうちん」が恋しくなるのは、季節とまったく関係なかったみたいです。