巻き爪がひどいから、見に来てほしい。
そんな往診の依頼もある。
認知症があり、かかりつけ医がいるのだが、巻き爪だけのために皮膚科受診はできないという。なるべくなら往診で負担なく見てほしい。
ニッパーで爪を切り、ドリルで形を整える。
「巻き爪自体はひどくないですし、歩いているわけではないので、足にも負担がかかっていません。だから定期的爪をやすりで削ってあげればいいでしょう。」
そんな私の指導に、同席したご家族が苦笑いしながら、申し訳なさそうに頭を下げる。「こんな往診ですいません。」
初めて見る患者さん、別に医者がしなければならないことではないかもしれない。しかし、私にできることがあるなら、できることをしてあげればいい。そんなことを教わった往診だった。