在宅の視点、外来の視点

もともと在宅医療は、24時間365日が当たり前だった。

だから、患者さんに何か困ったことが生じた際には、いつでも連絡してください。いつでも診ます。という言葉が言えた。

しかし外来の場合、そうはいかない。

もちろん外来の患者さんにもいつでも往診します。とはいえるし、言っているものの、外来の開設時間が短いと、いつでも来てください。と言えないのだ。

外来の患者さんは必ずしも往診を望んでいない。

だから開設時間の長い外来を作りたいと思ってしまう。

こういうところに在宅慣れした自分がいる。

帰れる高齢者、帰れない高齢者

本日は94歳の女性の退院前カンファレンスだった。

呼吸苦で入院して、一時は食事もとれなかったが、治療も終わり、食事もとれるようになり、起居動作もできるようになった。

これなら家に帰れるタイミングだと病院の先生方が判断した。

 

しかし退院前カンファレンスで集まったスタッフからは否定的な意見が飛び交う。

「ヘルパーを再度集めるには、時間がかかる。1~2週間ぐらいはかかってしまうので、年末になってしまう。それなら年明けまで入院させてもらったほうが・・・」

「年末で不安だから、有料老人ホームや病院などへの転居のほうがいいのではないか?」

「十分手伝ってあげられないし、無理もできない。」などなどだ。

 

本人はどう考えているのだろうと水を向けると、「家に帰りたいですか?」「・・・・?。みんなの言う通りにします。」とのこと。

 

自宅に帰れるかどうかは、病状や障害状況の重さや軽さではない。

帰りたいとおもうか?帰してあげたいと思うか?どうかなのだと痛感したカンファレンスだった。

退院のタイミング

すべて病気が治って、元気になって退院する。それがこれまで当たり前だったかもしれない。しかし高齢化社会でそうはいかなくなっている。

 

本日87歳男性の退院前カンファレンスに出席した。

もともと長年肺気腫を患っているうえに、肺がんを併発し、治療のために入院したが、入院中にも体の様々な部位に転移が見つかってしまったという。

まだまだ元気で、身の回りのことはできるが、最近では下痢が始まり、少しずつ食事がとれなくなっている。

奥さんも80代、多少認知症気味で、何度も同じことを聞くほどで、薬の管理などは無理。10剤以上の薬を飲んでいるのに・・・

 

下痢がなおり、食事がとれるようになったら退院しよう。ある意味、普通のことだ。しかし、本当にそうなって帰れるという保証はない。

 

もしかすると下痢が止まり、食欲も回復して、今以上に元気になって帰れるかもしれない。でも、年齢や病状から考えると次から次へと悪いことが起きるのではないだろうか、そんな思いに駆られたとき。

 

娘さんが言う。「この年末に家族で温泉旅行に行こうと予約しました。」

誰もがそれは難しいことを知っていた。でもその目標を達成するためには、下痢が止まるまで待っていてはいけない。食事がとれるようになるまで待っていてはいけない。まずは帰れるうちに帰ることしかない。だからすぐに帰ることになった。

 

高齢者が退院するためには、できないことをできるようになるまで待つのではなく、今できることを大事にするしかないのだと思った瞬間だった。

コミュニケーションツールとしてのエコー

これまで当院では在宅用に3台のエコー装置を使用してきた。

このたび先日導入したばかりの外来用エコー(超音波診断装置)の第一回院内勉強会が開催された。

初回の今日は整形外科エコーの勉強会だった。

さすがに整形外科の先生方は解剖に詳しい。私などは何がどう見えているのかチンプンカンプンだった。

次回は内科系の予定だが、エコーは非侵襲的検査であり、手軽であるという利便があるだけではなく、一つの診断装置でみんながわいわい集まれるという機会を提供する非常に珍しい医療機器であると思った次第である。