夜の勉強会

当院は一階に外来部門があり、2階には在宅医療部門がある。

夜、一階は早々に6時に締まり、2階だけが延々夜中まで機能していることが多い。

 

今日は珍しく1階から8時近くなのに人の声が響き渡っている。

 

なんだろうと思って下に降りてみると、

地域の有志がリハビリ室を使って勉強会をしていた。

みんな給与のため集まっているわけでもない。業務命令で集まっているわけでもない。

仲間うちが学びながら、集っている様子がうかがい知れる。

 

こんな集まりが、誰もいなくなったクリニックで起こっていることを私は誇らしく思う。

 

人が集い、伸びあう場を提供できたことを・・・

肺がん検診読影会

区民検診のうちで肺がん検診だけは、2重読影つまり呼吸器専門医とのダブルでの読影が不可欠である。

 

だから院内単独ではできない。

 

まだ当院は外来や検診を開始したばかりであることもあり、読影会に行く機会も少ないし、一回一回の読影会にもっていくレントゲン写真も少ない。

 

たまにしかいかないのに、一回あたり、2枚だったり、3枚だったり、今日は初めて6枚持って行った。

 

でもほかの開業医の先生は桁が違う。

 

今日は30枚です。60枚です。・・・

 

それだけ区民の健康を守り続けていることに頭が下がる。

 

一日80人までの患者さんなら、スタッフなしで一人で見ることができる。んだよ。

と当たり前のように20年選手の開業医がいう。

 

正し小児が来たらパニックになるけどね…とお茶目にとぼける。

 

私は20名少しでふうふう言っているのに・・・

医療経営

長年地域医療機関を運営して来て、しかも自分一人や少数の医療機関ではなく多数のスタッフが集う医療機関を運営して来て、思うことがある。

今の時代、医療経営はまさに「綱渡り」であるということである。

一本の綱を渡り切るのも難しいが、その一本を渡り切るとまた違う綱を渡らなければならい。そして綱を乗り継ぎながら、時代変化という坂道を登っていくようなものなのだ。

一歩踏み外せば、奈落の底に落ちるだろう。

それぞれの綱にはそれぞれの厳しさがある。

医療トラブルから医療訴訟へと進展することもあるだろう。

保険者から目をつけられて、保険医療が立ちいかなくなることもあるだろう。

経営的に破たんして、にっちもさっちもいかなくなることもあるだろう。

そのほか、常時スタッフが集まらない、患者さんが集まらない。資金がショートする。など実にいろいろな心配が加わる。

 

高齢化の進展に合わせて急激に診療報酬体系や社会背景も変化しつつある。

だから一つの現場に適合できても、永住することは許されない。

次々と新しい現場へ適合していかないといけないのだ。

 

営業形態を限定し、スタッフも少なければ、ある程度気が楽だが。

複数のスタッフを雇用して、場を広げたとき、重量挙げのバーベルのような重荷を背負って綱渡りをするようなものなのだ。

 

今日若手の医療経営者と話をしていて、とても感心したことがある。

 

私が、何十年もかけて会得したこれらのことを、いともたやすく会得しており、しかもすでに解決策を持っているのだ。

 

だから余計な規模化はせずに、資産価値を高めることに集中して、資産価値が最も高い時に効率よく手放すべきというのだ。

そして次の医療機関づくりに行くというのだ。

まことにもって正しい。

 

しかしなぜか重荷を下ろせないでいる自分がいる。

むしろ新たな重荷を背負おうとする自分がいる。

 

そういうのをサガと呼ぶのだろう。

むしろ多くのスタッフがいてくれること。それこそが私の励みになっているのだ。

ルネッサンス

ウィキペディアによると、「ルネサンス: Renaissance[† 1][† 2])は「再生」「復活」を意味するフランス語であり、一義的には、古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動であり、14世紀イタリアで始まり、やがて西欧各国に広まった(文化運動としてのルネサンス)。また、これらの時代(14世紀 – 16世紀)を指すこともある(時代区分としてのルネサンス)。」とのことである。

 

私は、在宅医療はまさにルネッサンスだと思っている。

 

在宅医療で有用性を感じられている皮下輸液は、昭和の50年代前に一時は普及した点滴だったが、その後穿刺針の発達によって、静脈確保が容易になりすたれた点滴だ。

しかし有用性はあった。

確かに静脈点滴のような即効性は期待できないが、そのかわりいきなり循環動態を変化させない強みがある。つまり厳密に輸液量を管理しなくとも、肺水腫や全身のむくみを作りづらいという利点がある。さらに逆血や閉塞の問題もない。

在宅や介護の現場では数々の利点がある。

 

また昨日ペリアクチンの在宅現場での有用性について、先人に伺うことができた。

昨今はあまり使われなくなったペリアクチン。一時は抗ヒスタミン薬として多用されたが、副作用が強いためにすたれつつある薬。しかし副作用の有用性に着目すると、在宅での使用可能性が伸びる。その副作用とは食欲増進作用だ。食欲が出なくて困っている高齢者に夜一錠服用してもらうことにより劇的な効果があるというのだ。

 

このようにすでにすたれてしまった治療法や薬を復権して、再利用する。

そんなルネッサンスも、在宅医療の一面かもしれない。